講演の冒頭で、小林は次のように話します。…アートはとても盛んである。みんな知識だけはいっぱい持っている。しかし、本当にアートがわかる人なんて、ほとんどいないのではないか。…それよりは、小さな勾玉のようなものでいいから、いつも傍に置いて、時間をかけてゆっくり対話をするといったことの方が、感性も磨かれるし、ずっといろいろなことがわかって来て有意義である、とまあ、大体こんなことを語っています。
アートがときどき降ってくる - FC2 BLOG パスワード認証
しょっちゅう展覧会へ出かけていくものの、一月、いや一週間でそのことを忘れてしまう私には耳の痛いことを言われたように感じる。
大阪市立美術館まで観に行ったけれど、観覧最中スキャンダルめいた事ばかりを思い出し、複雑な感情を抱いていました。…大島一洋の『芸術とスキャンダルの間』で書かれた偽佐伯作品の事を思うと、やはり落ち着かない。どうしてこんなにも妙な伝聞がある画家なんでしょう。…各美大の日本画科や洋画科に数人はいるであろう自意識過剰な人間。他人の気持ちを思いやるよりは自分の欲求を優先する、繊細さと狂気を持ち合わせた人間の目や輪郭。…結核患者だから隔離されるのは仕方が無いとしても、まるで幽閉されたかのような死。そして後を追うように亡くなった娘。描かれた絵画についても様々な憶測が飛び交う。パリで知り合った日本人画家の画風を盗んで自分のものとした、米子夫人が文字部分を描き込んだ、等々。
http://d.hatena.ne.jp/PW_paperback/20081110/
そういえば家にあったような違ったような…と本棚を確認すると、ありました。
芸術とスキャンダルの間――戦後美術事件史 (講談社現代新書)
- 作者: 大島一洋
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/08/18
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ということで、『芸術とスキャンダルの間』を(風呂場で)読み返してみた。第3章、1994年に遠野市で出てきた佐伯作品に関することだった。結局、これらの佐伯作品が真作か否かは不明のままなのだが。しかしこれに付随して出てきた資料に含まれる米子夫人の、佐伯作品への加筆告白が、かなり気にかかる。
内容に関しては近所の図書館ででもこの本を借りて読んでもらった方がよかろう。まぁこの新書もさらに元本となる天才画家「佐伯祐三」真贋事件の真実を併せて読んだ方が良いのだろうけど…読んでませんm(_ _)m。
先日、私も愚文ながら感想をアップしている。秩序立った美術教育を受けていない私では、たいした感想文でないのだが。
今回特に興味を持ったのがモランの寺院の連作だ。描けなくなる一月ほど前の旅行で、連作を描いたのだ。同じ寺院を描いた5つほどの作品が並べられていたのだが、どれも雰囲気が違う。どの作品にも実験を行っているかのように。立体的、平面的、単色的、階調的…。でも、どの作品も間違いなく佐伯の特徴が出ている。これらの連作を観て、より高いところにこの人は登っていけるな、という明るさを感じた。
佐伯祐三展@大阪市立美術館 - 子子子子子子(ねこのここねこ)
同じものを同じ時に描いたとは思えないバリエーションは、もしかして、米子夫人という他者の介在によって生まれたのか…あまり考えたくないのだが。