(四季耕作図屏風:東京芸術大学大学美術館所蔵)
狩野山楽・山雪展の四季耕作図屏風
狩野山楽・山雪展の前期*1にのみ出展されていた四季耕作図屏風。描写もかなり良いものでした。そして登場人物の動きも工夫されており、細かいところまで楽しめました。稲作にどのような作業があるかが一目で分かります。もちろん稲作以外の光景も含まれていました。
なお、狩野山楽・山雪展は5/12まで開催中。
四季耕作図とは
さて。四季耕作図というのはよく取り上げられる画題です。十二世紀前半に南宋の楼璹(ろうちゅう)が描いて、皇帝高宗(wikipedia:高宗_(宋))に献上したのが始まりとされるとのこと。本来は養蚕・機織りの作業工程の図と併せて「耕織図」と呼ばれる*2のだそうです。
で、この「耕織図」には異本があるらしく、この山雪の屏風はその異本に基づいているとのこと。江戸狩野などで使われるのは9場面だけなので繋がりがわかりにくいけれども、京狩野に伝わる異本には21場面あるおかげで図中の稲作の工程がよく分かるようになっています。
京狩野の四季耕作図ネタ本が国会図書館に
さて。
山雪周辺のことを調べるため国立国会図書館サーチで検索していたら、息子の狩野永納が写した本「耕織図」が見つかりました。
上巻:耕織図. 上 - 国立国会図書館デジタルコレクション
下巻:耕織図. 下 - 国立国会図書館デジタルコレクション
上巻が耕作に関する図、下巻は上記したように養蚕と機織りに関する図です。
国立国会図書館の電子展覧会「描かれた動物・植物 江戸時代の博物誌」でも取り上げられています。
山雪の四季耕作図屏風もこの「耕織図」に基づいて描かれているのでしょう。
21場面の各表題
時間があったら上巻だけでも翻刻、じゃなくても場面の意味をリストアップしたいのですが、断念して場面の表題だけ挙げておきます。フリガナが振ってある単語にはフリガナをその表記のまま付けておきます。ただでさえ読みづらいし今では使わない漢字が多いです。
- 浸種(シンシユ)
- 耕 (上記の図はこれですね)
- 耙耨(ハトウ)
- 耖 (シヨウ)
- 碌碡(ロクトク)
- 布秧(ホワウ)
- 淤䕃(ヲイン)
- 拔秧(ハツワウ)
- 揷秧(サクワウ)
- 一耘(一ウン)
- 二耘(二ウン)
- 三耘(三ウン)
- 灌漑(クワンカイ)
- 收刈(シユウカイ)
- 登塲(トウチヤウ)
- 持穂(シスイ)
- 簸揚(ハヤウ)
- 礱 (ロウ)
- 舂碓(シヨウタイ)
- 籭 (サイ)
- 入倉(シユサウ)
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