子子子子子子(ねこのここねこ)はてブロ部

Macネタが主のIT記事と、興味ある展覧会リストや観覧感想などを書いてますよ。自転車ロードレースも好き。

国民を展覧会へ行かせたいなら、国立美術館・博物館観覧時間を延ばすよりも

昨日書いた単純な結論

昨日書いたツイート2つ。



なのに来年度からパスポート廃止されるのよね…。

ということで、ちょっと文化庁対応(=「国立の美術館や博物館の開館時間を延ばすなどして、触れる機会を増やしていきたい」)への不満を書いてみる気になった。

全国を対象にすれば違って見えるか?

とはいえ、これは私が博物館へ比較的すぐ行ける環境に居るから出てくる不満。全国調査での不満はもう少し違ってくるかもしれない。

調査結果をもう少し詳しく

文化に関する世論調査 2 調査結果の概要 1 - 内閣府
から引用。

(2) 美術館・博物館での鑑賞の促進策
 どうすれば美術館や博物館にもっと行きやすくなると思うか聞いたところ,「入場料が安くなる」を挙げた者の割合が32.6%,「住んでいる地域やその近くに美術館・博物館ができる(増える)」を挙げた者の割合が30.7%と高く,以下,「美術館や博物館へ行くための交通の利便が良くなる」(23.6%),「展覧会の開催に関する情報がわかりやすく提供される」(22.0%),「閉館時間が遅くなり,夜間でも鑑賞できるようにする」(19.2%)などの順となっている。 なお,「特にない」と答えた者の割合が12.6%となっている。(複数回答,上位5項目)
 都市規模別に見ると,「入場料が安くなる」,「展覧会の開催に関する情報がわかりやすく提供される」,「閉館時間が遅くなり,夜間でも鑑賞できるようにする」を挙げた者の割合は大都市で,「住んでいる地域やその近くに美術館・博物館ができる(増える)」を挙げた者の割合は小都市で,それぞれ高くなっている。
 性別に見ると,「入場料が安くなる」,「住んでいる地域やその近くに美術館・博物館ができる(増える)」を挙げた者の割合は女性で高くなっている。
 年齢別に見ると,「入場料が安くなる」を挙げた者の割合は40歳代,50歳代で,「閉館時間が遅くなり,夜間でも鑑賞できるようにする」を挙げた者の割合は30歳代から50歳代で,それぞれ高くなっている。

公開されているCSVデータから「入場料値下げ」と「鑑賞時間延長」だけ抜き出して表にしてみましょう。
それぞれの括弧内は、総数に対してそれぞれの区分での度数が何倍であるかを示しています。
さらに「入場料値下げ」が「鑑賞時間延長」の希望意見の何倍であるかを「比率」として末尾に追記しました。

表3 美術館・博物館での鑑賞の促進策(複数回答)

該当者数(人) 入場料が安くなる(%) 閉館時間が遅くなり、
夜間でも鑑賞できるようにする(%)
比率
総数 1831 32.6 19.2 1.70倍
〔都市規模〕
大都市 465 39.8 (1.22倍) 22.6 (1.18倍) 1.76倍
東京都区部 109 40.4 (1.24倍) 28.4 (1.48倍) 1.42倍
政令指定都市 356 39.6 (1.21倍) 20.8 (1.08倍) 1.90倍
中都市 745 30.1 (0.92倍) 19.7 (1.03倍) 1.53倍
小都市 447 30.9 (0.95倍) 16.3 (0.85倍) 1.90倍
町村 174 28.2 (0.87倍) 15.5 (0.81倍) 1.82倍
〔性〕
男性 865 30.1 (0.92倍) 19.8 (1.03倍) 1.52倍
女性 966 34.8 (1.07倍) 18.7 (0.97倍) 1.86倍
〔年齢〕
18〜29歳 170 34.1 (1.05倍) 20.0 (1.04倍) 1.71倍
30〜39歳 229 36.2 (1.11倍) 27.1 (1.41倍) 1.34倍
40〜49歳 326 38.3 (1.17倍) 23.9 (1.24倍) 1.60倍
50〜59歳 273 37.7 (1.16倍) 30.8 (1.60倍) 1.22倍
60〜69歳 366 32.5 (1.00倍) 17.2 (0.90倍) 1.89倍
70歳以上 467 23.1 (0.71倍) 6.6 (0.34倍) 3.50倍
〔従業上の地位〕
雇用者 876 37.2 (1.14倍) 26.6 (1.39倍) 1.40倍
自営業主 148 25.7 (0.79倍) 20.9 (1.09倍) 1.23倍
家族従業者 38 18.4 (0.56倍) 28.9 (1.51倍) 0.64倍
無職 769 29.3 (0.90倍) 10.0 (0.52倍) 2.93倍
主婦 414 30.0 (0.92倍) 10.6 (0.55倍) 2.83倍
主夫 32 28.1 (0.86倍) 12.5 (0.65倍) 2.25倍
学生 56 28.6 (0.88倍) 17.9 (0.93倍) 1.60倍
その他の無職 267 28.5 (0.87倍) 7.1 (0.37倍) 4.01倍
〔職業〕
管理・専門技術・事務職 440 39.8 (1.22倍) 32.7 (1.70倍) 1.22倍
管理職 73 31.5 (0.97倍) 30.1 (1.57倍) 1.05倍
専門・技術職 169 42.6 (1.31倍) 31.4 (1.64倍) 1.36倍
事務職 198 40.4 (1.24倍) 34.8 (1.81倍) 1.16倍
販売・サービス・保安職 308 35.1 (1.08倍) 22.7 (1.18倍) 1.55倍
農林漁業職 46 23.9 (0.73倍) 6.5 (0.34倍) 3.68倍
生産・輸送・建設・労務 266 28.9 (0.89倍) 21.8 (1.14倍) 1.33倍
無回答 2 - - -

表データから分かること

  • 「入場料が安くなる」と「夜間開館」との比率
    • 「夜間開館」よりも「入場料が安くなる」が少ないのは「家族従業者」のみ。
    • 「夜間開館」よりも「入場料が安くなる」ことが比較的求められていない(比率1.40倍未満)のは「30代・50代」「自営業主・家族従業者」。
    • 職業区分だと「販売・サービス・保安職」「農林漁業職」以外は比率1.40倍以上。サービス業からは高すぎると思われているか。「農林漁業職」は町村在住が多いと思われるので、展覧会自体があまり開催されないためではないか
  • 都市規模
    • 「入場料が安くなる」ことを求めているのは大都市・東京都区部政令指定都市
    • 「夜間開館」を求めているのは大都市。その中でも、強く求めているのは東京都区部
    • 中小都市および町村では何れも総数と同じ、もしくは下回る。展覧会自体があまり開催されないためか
  • 従業上の地位
    • 「入場料が安くなる」ことを求めているのは「雇用者」。その他の区分では総数を下回る。「学生」が求めていないのは学割があるためか。
    • 「夜間開館」を求めているのも「雇用者」、そして「家族従業者」。
  • 職業
    • 「入場料が安くなる」ことを求めているのは「管理・専門技術・事務職」その中でも「専門・技術職」と「事務職」。
    • 「夜間開館」を求めているのは「管理・専門技術・事務職」その中でも特に「事務職」。

改めて結論:文化庁が為すべきこと

昨日のツイートでは単純に「観覧時間延長よりも観覧料を安くしたほうがいいぞ」と書いたのだが、どの区分に対して展覧会に来てほしいのかによって為すべきことが変わるように思われます。
東京都区部であれば確かに夜間観覧が強く求められています。都市部でも。
文化庁管轄の国立美術館・博物館は都市部にしか無いので、文化庁が出来ることとしては「観覧時間延長」なのかもしれません。すぐ行える対策ですし。
ですが、文化庁が為すべきなのは、都市部在住者だけを対象とすることではないはず。中小都市および町村の観覧環境を改善することが重要なのではないでしょうか

なんだかイメージしてたことと違う結論になった。もっと「安くしろ」をイチオシにした結論にしたかったのにw