昨日書いた単純な結論
昨日書いたツイート2つ。
土曜日くらいに流れてたニュースが内閣府から公開された。調査結果を受けて文化庁が「観覧時間延長」とか言ってたが、概略版pdf見ると「夜間鑑賞」19.2%よりも「安くしろ」32.6%。意図的な勘違いするな文化庁。|文化に関する世論調査 https://t.co/qiG1rwF3ZK pic.twitter.com/5Q4Towssrt
— りおかんぽす (@riocampos) 2016年11月21日
ニュースってこんなやつね。『文化庁は、国立の美術館や博物館の開館時間を延ばすなどして、触れる機会を増やしていきたいとしています。』調査結果の曲解。|文化芸術を直接鑑賞 59%余にとどまる 内閣府調査 | NHKニュース https://t.co/GKAE8J83FF https://t.co/8kBhrmDZES
— りおかんぽす (@riocampos) 2016年11月21日
なのに来年度からパスポート廃止されるのよね…。
ということで、ちょっと文化庁対応(=「国立の美術館や博物館の開館時間を延ばすなどして、触れる機会を増やしていきたい」)への不満を書いてみる気になった。
全国を対象にすれば違って見えるか?
とはいえ、これは私が博物館へ比較的すぐ行ける環境に居るから出てくる不満。全国調査での不満はもう少し違ってくるかもしれない。
調査結果をもう少し詳しく
文化に関する世論調査 2 調査結果の概要 1 - 内閣府
から引用。
(2) 美術館・博物館での鑑賞の促進策
どうすれば美術館や博物館にもっと行きやすくなると思うか聞いたところ,「入場料が安くなる」を挙げた者の割合が32.6%,「住んでいる地域やその近くに美術館・博物館ができる(増える)」を挙げた者の割合が30.7%と高く,以下,「美術館や博物館へ行くための交通の利便が良くなる」(23.6%),「展覧会の開催に関する情報がわかりやすく提供される」(22.0%),「閉館時間が遅くなり,夜間でも鑑賞できるようにする」(19.2%)などの順となっている。 なお,「特にない」と答えた者の割合が12.6%となっている。(複数回答,上位5項目)
都市規模別に見ると,「入場料が安くなる」,「展覧会の開催に関する情報がわかりやすく提供される」,「閉館時間が遅くなり,夜間でも鑑賞できるようにする」を挙げた者の割合は大都市で,「住んでいる地域やその近くに美術館・博物館ができる(増える)」を挙げた者の割合は小都市で,それぞれ高くなっている。
性別に見ると,「入場料が安くなる」,「住んでいる地域やその近くに美術館・博物館ができる(増える)」を挙げた者の割合は女性で高くなっている。
年齢別に見ると,「入場料が安くなる」を挙げた者の割合は40歳代,50歳代で,「閉館時間が遅くなり,夜間でも鑑賞できるようにする」を挙げた者の割合は30歳代から50歳代で,それぞれ高くなっている。
公開されているCSVデータから「入場料値下げ」と「鑑賞時間延長」だけ抜き出して表にしてみましょう。
それぞれの括弧内は、総数に対してそれぞれの区分での度数が何倍であるかを示しています。
さらに「入場料値下げ」が「鑑賞時間延長」の希望意見の何倍であるかを「比率」として末尾に追記しました。
表3 美術館・博物館での鑑賞の促進策(複数回答)
該当者数(人) | 入場料が安くなる(%) | 閉館時間が遅くなり、 夜間でも鑑賞できるようにする(%) |
比率 | |
---|---|---|---|---|
総数 | 1831 | 32.6 | 19.2 | 1.70倍 |
〔都市規模〕 | ||||
大都市 | 465 | 39.8 (1.22倍) | 22.6 (1.18倍) | 1.76倍 |
東京都区部 | 109 | 40.4 (1.24倍) | 28.4 (1.48倍) | 1.42倍 |
政令指定都市 | 356 | 39.6 (1.21倍) | 20.8 (1.08倍) | 1.90倍 |
中都市 | 745 | 30.1 (0.92倍) | 19.7 (1.03倍) | 1.53倍 |
小都市 | 447 | 30.9 (0.95倍) | 16.3 (0.85倍) | 1.90倍 |
町村 | 174 | 28.2 (0.87倍) | 15.5 (0.81倍) | 1.82倍 |
〔性〕 | ||||
男性 | 865 | 30.1 (0.92倍) | 19.8 (1.03倍) | 1.52倍 |
女性 | 966 | 34.8 (1.07倍) | 18.7 (0.97倍) | 1.86倍 |
〔年齢〕 | ||||
18〜29歳 | 170 | 34.1 (1.05倍) | 20.0 (1.04倍) | 1.71倍 |
30〜39歳 | 229 | 36.2 (1.11倍) | 27.1 (1.41倍) | 1.34倍 |
40〜49歳 | 326 | 38.3 (1.17倍) | 23.9 (1.24倍) | 1.60倍 |
50〜59歳 | 273 | 37.7 (1.16倍) | 30.8 (1.60倍) | 1.22倍 |
60〜69歳 | 366 | 32.5 (1.00倍) | 17.2 (0.90倍) | 1.89倍 |
70歳以上 | 467 | 23.1 (0.71倍) | 6.6 (0.34倍) | 3.50倍 |
〔従業上の地位〕 | ||||
雇用者 | 876 | 37.2 (1.14倍) | 26.6 (1.39倍) | 1.40倍 |
自営業主 | 148 | 25.7 (0.79倍) | 20.9 (1.09倍) | 1.23倍 |
家族従業者 | 38 | 18.4 (0.56倍) | 28.9 (1.51倍) | 0.64倍 |
無職 | 769 | 29.3 (0.90倍) | 10.0 (0.52倍) | 2.93倍 |
主婦 | 414 | 30.0 (0.92倍) | 10.6 (0.55倍) | 2.83倍 |
主夫 | 32 | 28.1 (0.86倍) | 12.5 (0.65倍) | 2.25倍 |
学生 | 56 | 28.6 (0.88倍) | 17.9 (0.93倍) | 1.60倍 |
その他の無職 | 267 | 28.5 (0.87倍) | 7.1 (0.37倍) | 4.01倍 |
〔職業〕 | ||||
管理・専門技術・事務職 | 440 | 39.8 (1.22倍) | 32.7 (1.70倍) | 1.22倍 |
管理職 | 73 | 31.5 (0.97倍) | 30.1 (1.57倍) | 1.05倍 |
専門・技術職 | 169 | 42.6 (1.31倍) | 31.4 (1.64倍) | 1.36倍 |
事務職 | 198 | 40.4 (1.24倍) | 34.8 (1.81倍) | 1.16倍 |
販売・サービス・保安職 | 308 | 35.1 (1.08倍) | 22.7 (1.18倍) | 1.55倍 |
農林漁業職 | 46 | 23.9 (0.73倍) | 6.5 (0.34倍) | 3.68倍 |
生産・輸送・建設・労務職 | 266 | 28.9 (0.89倍) | 21.8 (1.14倍) | 1.33倍 |
無回答 | 2 | - | - | - |
表データから分かること
- 「入場料が安くなる」と「夜間開館」との比率
- 「夜間開館」よりも「入場料が安くなる」が少ないのは「家族従業者」のみ。
- 「夜間開館」よりも「入場料が安くなる」ことが比較的求められていない(比率1.40倍未満)のは「30代・50代」「自営業主・家族従業者」。
- 職業区分だと「販売・サービス・保安職」「農林漁業職」以外は比率1.40倍以上。サービス業からは高すぎると思われているか。「農林漁業職」は町村在住が多いと思われるので、展覧会自体があまり開催されないためではないか。
- 都市規模
- 従業上の地位
- 「入場料が安くなる」ことを求めているのは「雇用者」。その他の区分では総数を下回る。「学生」が求めていないのは学割があるためか。
- 「夜間開館」を求めているのも「雇用者」、そして「家族従業者」。
- 職業
- 「入場料が安くなる」ことを求めているのは「管理・専門技術・事務職」その中でも「専門・技術職」と「事務職」。
- 「夜間開館」を求めているのは「管理・専門技術・事務職」その中でも特に「事務職」。
改めて結論:文化庁が為すべきこと
昨日のツイートでは単純に「観覧時間延長よりも観覧料を安くしたほうがいいぞ」と書いたのだが、どの区分に対して展覧会に来てほしいのかによって為すべきことが変わるように思われます。
東京都区部であれば確かに夜間観覧が強く求められています。都市部でも。
文化庁管轄の国立美術館・博物館は都市部にしか無いので、文化庁が出来ることとしては「観覧時間延長」なのかもしれません。すぐ行える対策ですし。
ですが、文化庁が為すべきなのは、都市部在住者だけを対象とすることではないはず。中小都市および町村の観覧環境を改善することが重要なのではないでしょうか。
なんだかイメージしてたことと違う結論になった。もっと「安くしろ」をイチオシにした結論にしたかったのにw