- 作者: 渡辺眸
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/10
- メディア: 単行本
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ただ、大学の友人、青木という男が、山本義隆という名を繰り返しつぶやいたことだけが心に残っている。
青木は駿台予備校で山本義隆の講義を受けたのだろうか。詳しくは知らない。
いずれにせよ、私にとって、全共闘・山本義隆という文字を見ると、青木という、今はもう付き合いが絶えてしまった男のことが浮かび上がってくるのだ。
不器用な男だった。センスの鋭い天才であるにもかかわらず、授業へ出てこなくなってしまい、おかげで二留してしまった。その後は郵便局へ三種で入り、その後試験で上位資格を取得した、というふうに聞いた。
青木には毎年実家宛に年賀状を出しているが、返事は一度も帰ってこない。でも次の正月にも年賀状を出すだろう。奴と会えた縁を残しておきたい、なぜかそう思っているのだ。