おことわり(2019/1/16)
この記事は一旦書いたあと追記する予定で下書きにそのまま放置していたものです。本来は高麗青磁展開催中に公開せねばならぬものでしたが、写しについての部分が書き切れないまま時間が過ぎ、気持ち的に公開できないまま期間を超えてしまいました。
オススメポイント
日本国内のやきもの(陶磁器)の展覧会は
- 茶道(抹茶)の茶器 > 煎茶道の茶器 >> その他
のようなヒエラルキーに組み込まれているものが大半です。しかも茶道の茶器の良し悪しは、利休以降の茶道の歴史を踏まえていないと理解できないものが大半です*1。なので感性だけでは観れない。この点が日本のやきもの関連展覧会のハードルを非常に高くしていると感じています。
しかし。この高麗青磁は茶道にほぼ関連していません。19世紀末に発掘されて再発見されたものであり、それまでは幻のやきものだったのです。
よって、高麗青磁の展覧会では「キレイだねー」「美しいよねー」という、個人的な感想だけで観ることが出来るのです。これはやきもの展覧会として非常に稀です。
美しいものを素直に観ることが出来る、それが高麗青磁展です。しかも、朝鮮のやきものに関して世界中でも最上級のコレクションを有する東洋陶磁美術館で開催するので、他館から借りてきた少数の優品と組み合わせて、これでもかこれでもかと溺れるほどの量で素晴らしい作品たちを観ることが出来るのです。
もちろん東洋陶磁美術館の所蔵品が大半なので、常設展示で観ることもできます。しかし、たくさんの展示品がまとめてあれば「さっきのものとどう違うのかな」「これとそれと似てるけどどっちがいいかな」などと展覧会場内で比較する楽しみが得られるわけです。これは特別展のほうが格段にやりやすいし、格段に楽しめます。
ということで、できれば今回、大阪市立東洋陶磁美術館へ足を運ぶことをオススメします。
高麗青磁展は11/25までです。
現在の展覧会 | 展覧会情報 |大阪市立東洋陶磁美術館
高麗青磁とは
簡単に言っちゃうと
- 朝鮮の高麗時代(918-1391)に作られたやきもののうち、青磁釉が掛けられたもの
です。青磁の焼き物はもちろん高麗青磁以外にもあり、中国の窯が起源です。
また青磁釉が掛けられたものであって青いやきものではないことにも注目してください。なのでこの高麗青磁展には、青くないやきものもたくさん展示されています。
そして高麗青磁には大きく分けて二種類あります。翡色青磁と象嵌青磁です。象嵌青磁じゃないものが翡色青磁だと思っていただければ簡単です*2。また象嵌青磁は高麗青磁特有の技法だと思っていただいて問題ないでしょう。
歴史的には、翡色青磁が12世紀に最盛期を迎え、また象嵌青磁が12-13世紀に最盛期を迎えます。なお高麗はモンゴル帝国と13世紀前半に戦い、その後にその支配下に入ります。日本侵攻である元寇は13世紀末*3です。元寇の頃には残念ながら高麗青磁は衰退期に入るのです。
翡色青磁とは、ヒスイの色合いをイメージ*4した、と思われる名称*5です。中国の青磁の最高峰は汝窯という窯のやきものなのですが、それの色合いは天青色と言われ、雨上がりの空の青さを意味するそうです。
展示されている優品たち
国宝や重要文化財(重文)であるからといって優品とは限りませんが、いちおう載せておきましょう。
高麗青磁の国宝はありません。重文は3点です。この展覧会にはその3点が全て展示されています。
[ID:1120] 青磁象嵌 童子宝相華唐草文 水注 : 作品情報 | 収蔵品紹介 | 大阪市立東洋陶磁美術館
青磁蓮唐草文水瓶|根津美術館
青磁九竜浄瓶*6|コレクション-陶磁|大和文華館
今回の展覧会のメインビジュアルとして使われている青磁九竜浄瓶は、やはりインパクトありますよね。
高麗青磁再発見・そして再現品制作
今回の展覧会では、序として「近代における高麗青磁の『再発見』と再現」の部屋が設けられています。ココには
近代につくられた高麗青磁の再現品も併せて展示
されています。
展覧会場を観て回る時間に余裕があるならば、出来ればここを最後に(もしくは最後にも再び観て)回ってほしいと思います。なぜならば、この部屋の展示は基本的に余談なのです。
…これまで朝鮮半島の高麗時代(918〜1392年)の制作としていた所蔵品の水注を、20世紀初頭に作られた再現品として展示する。ともすれば真贋問題になりそうな変更だが、美術館は「長い研究の成果で判明した事実。再現品でもきわめて貴重な作品だ」としている。
制作年が「1915〜20年代ごろ」と改め展示されるのは、「青磁象嵌菊牡丹文瓜形水注」。所蔵品の中核を成す「安宅コレクション」の1点。
…高麗青磁は、王朝の滅亡と共に姿を消し「幻のやきもの」となっていたが、19世紀末、墳墓から副葬品の高麗青磁が掘り起こされ“再発見”された。その美しさから世界の収集家が注目。現地では日本人を含むさまざまな人が高麗青磁の再現に熱心に取り組んだ。優れた再現品が生まれた一方で、流通段階で「高麗青磁」とみなされてしまったものも少なくなかった。
…研究成果を出品協力を仰いだ東京国立博物館などにも説明。他館が同様に「高麗時代」の作としていた作品数点も近代の再現品として紹介する。
高麗青磁の優品たちを観たあとに、再現品がどう観えるか、自分の目で確かめてみてください。「ああやはり再現品だな」と思うか「いやー分からんわー」と思うか。
なお、大事なことを一つ書いておきます。
再現品や模造品は似せ物や(いわゆる)写しであり、偽物ではありません。写しの文化は東洋に古来から伝わるものであり、その*7
末尾にお詫び
「高麗青磁」展ブロガー招待に当選したのは…そう、8月末だったのです。
今日はもう10月中旬。展覧会は11/25まで。つまり展覧会はほぼ半分が過ぎております…。まあ理由はいろいろあるのですが、あまり言いたい内容ではありませんので書きません。ご招待してくださった大阪市立東洋陶磁美術館のみなさま(特に小林仁(@xiaolin3333)さん)遅くなりごめんなさい。「高麗青磁」展ブロガー招待に当選したのでやってきました。 (@ 大阪市立東洋陶磁美術館 in 大阪市, 大阪府) https://t.co/VHOyAJmio0 pic.twitter.com/m02qXxffWE
— りおかんぽす (@riocampos) 2018年8月31日
参考文献
- 高麗青磁展図録(大阪市立東洋陶磁美術館、2018年)
- 東洋陶磁の展開(大阪市立東洋陶磁美術館、1994年改訂版)
- 高麗青磁・李朝白磁へのオマージュ(伊藤郁太郎、淡交社、2017年)
- 韓国のやきもの | 淡交社 京都の茶道美術図書出版社(姜敬淑(山田貞夫訳)、淡交社、2010年)