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生誕150年 横山大観展

否定意見を先に見かけてしまった

私、大観は好きな方です。なのですが、観に行く前に見かけたいろいろな人のツイートが総じて否定的だったのがとても気になったのです。

 横山大観といえば近代日本を代表する画家であり、国民画家といっていい。…日本画という形式を確立させた功績は大きい。展覧会の構成も「明治」「大正」「昭和」と単純明快な分け方だ。絵そのものもわかりやすい。…富士にしろ桜にしろ四季の風景にしろ、見たまんま、なんの裏もない。
 …グローバルというより節操がないのかもしれない。これは芸術家にとって重要な気質だ。全長40メートルを超す《生々流転》などは、長大さで目を引こうというスタンドプレイだろう。…大観の行為は戦時下における芸術家の模範的役割を示すと同時に、国民に対する愛国精神のアピールにもなったはず。…まあ残された作品より、近代日本の広告塔としての役割のほうが大きかった画家ではないかと思った。
生誕150年 横山大観展:artscapeレビュー|美術館・アート情報 artscape

もちろん否定的ではない意見もあります。

とはいえ、なんだか否定的な前評判を受けてから行くのは変な先入観が付いていてちょっとやだなーと思いつつ、京近美での前期最終日に足を運んだのでした。

会場にて

想像以上の入館者数に驚き。ショップも大盛況。会場へ上がるエレベーターへの長い行列。列ぶのが面倒なので横の階段を3階まで登る。そして会場も大盛況。
日本画の展覧会、特に院展系の展覧会には日参しているので、個人蔵ではない今回の出展作品はだいたい以前に観たことがある。とはいえ、今回の展示の照明が明るいのか、以前見た作品も見やすく感じた。
大観の作品でいつも思うこと、動物が人っぽく、人が人形っぽい、今回もやはりそれを再確認した。
数十年ぶりに発見されたとのうわさで知っていた白衣観音、目がおかしい。
とはいえ人物画家ではないのだからそれは置いておけば良いのだ。否定からでは無く、良さを評価したい。
大観の表現で好きなのは、雨や空気などを表現する墨の色。その陰があるからこそ、他の部分が光り輝く。
絵の中は全て静止している。動きがない。だが見えない空気は動いている。雨も轟々と大地や水面へ降り注いでいる。つまり、大観はこの湿度の多い東アジアを描く画家なのだ。

見終えて

会場に居る人たちは、普段の日本画展と比較しても年齢層がとても幅広い。そして小難しい顔をして観ている人は少なく、楽しげである。展覧会の出口では「ああ楽しかった^^」という雰囲気を醸し出して出ていく人々ばかりである。
では、最初に掲げた人々はなぜ大観に対して否定的だったのか。それはやはり「国民画家」である大観の辛さではなかろうか。
例えばブラジルでは全ての人たちがサッカーの監督である。それは国民スポーツへの愛ゆえである。それゆえ自分の想いと異なっているものには否定的にならざるを得ない。しかし全ての国民がサッカー代表チームを愛している。
翻って日本における「国民画家」大観に対して。目を見張るほど細密描写が描けるわけではない。上にも書いたように、人物描写は稚拙である。動物をそのまま描くのでは無く、なぜか擬人化して描くことが多い。しかし、やはりそれは画家への愛ゆえに否定が先行してしまうのだ。つまり、やはり基本的にみんな大観が大好きなのだ。

と勝手に納得して筆を擱くことにする。

ちなみに

京近美は次も「国民画家」と呼ばれた人の展覧会である。はてさて。

ただし横山大観展とは逆に、京都展が先で東京展(@ 新美)が後である。