子子子子子子(ねこのここねこ)はてブロ部

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植田正治写真美術館の指定管理化

鳥取県の西部、大山を望むとても眺めの良いところに、植田正治写真美術館がある。
http://www.houki-town.jp/p/2/3/2/25/ (伯耆町のページ)
“–ƒy[ƒW‚͈ړ]‚µ‚Ü‚µ‚½ (公式ページ)
植田正治氏は福山雅治氏の師匠として近年一般人にも知名度が上がった写真家である。最近になって写真集などが幾つか発刊されたことでも認知度が上がっていると思われる。

植田正治の世界 (コロナ・ブックス)

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僕のアルバム

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植田正治 小さい伝記

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その作風は「植田調」と言われる。簡単に言えば「非日常」「作為的」「作り込み」である。作品を眺めていると、なんだか不思議な世界へ連れて行かれてしまう。
「写真」は「真を写す」と日本人は翻訳したのだが、本来はphoto-graph(ギリシャ語源で「光の記録」)なので、本当の真実が写真作品の中にあるわけではない。単なる「光」による「記録」である。

この植田正治写真美術館は、彼の出身地である境港市に近い旧・岸本町(現・伯耆町)にある。彼が別荘件アトリエとして所有していた(らしい)土地に岸本町が建てた美術館である。

妻の実家が近くにあるので、何度か訪れたことがある。はっきり言って、大山が一番美しく見える場所にある、と思っている。また、美術館内部にある、世界一大きなカメラに写る大山そして池に映る逆さ大山は、晴れた日に見ればひときわ大山の見事さを引き立てるであろう。
詳しくは、3月中は東海道新幹線で入手可能な「ひととき」3月号を見ていただければ良かろう。赤瀬川原平氏が植田正治写真美術館を訪れたときの印象を載せている。
引用記事へ
この「ひととき」は公共図書館で閲覧可能であるところが意外と多い(東海道新幹線の沿線のみかもしれないが)。



前置きが長くなった。
植田正治写真美術館が危機に直面している。
地方の美術館・博物館にはありがちな問題なのだが、予算不足で経営が成り立たなくなっているのだ。
やはり地方にあると観覧者数もさほど稼げない。人が来てくれるのは、今までに数度行った福山雅治関係の展覧会の時だけだったとのことだ。実際、福山雅治の展覧会を行うと、近辺の山陰ではなく、わざわざこの展覧会だけのために東京などから飛行機で米子空港まで飛んできてこの美術館へ訪れる人が多かった、とのことだ。つまり、この美術館の現状は福山雅治頼りともいえる。

当然ながら、地方自治体の予算状況というのは、どこもかしこもよろしくない。山陰の山の中の自治体ともなれば余計である。
ということで、伯耆町は重荷になっているこの美術館の切り離しを始めようとしている。指定管理者制度を使って、学芸部門以外を外部委託しようとしているのだ。
引用記事へ
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もちろん、このこと自体が悪いと言いたいわけではない。しかし、こうなる将来が見えていなかった自治体は責任を感じているのだろうか。

上記引用した3/19付けの日本海新聞から引用する。

 同美術館は「逆さ大山」の映る福岡ため池周辺に美術館の建設を要望した植田さんと、大型リゾート計画を推進していた旧岸本町の意向が合致し、一九九五年九月に開館した。

大型リゾートですよ。
なんですかそれは。
背伸びしすぎなんですよ。

でももう仕方がない。
箱ができ、中身の財産もしっかり出来ている。ここはできるだけ責任を持って維持すべきなのだ、造った岸本町が。
予算抑制のために指定管理者制度を用いるのはある面で仕方がないかもしれない。しかし、現状で

写真の保管や管理、展示企画などにかかわる学芸部門は、従来通り学芸員一人を配置し、町が直営で運営する

ような状態であり、外に出したからと言って予算が抑えられるようには思えない。
また、指定管理者制度=丸投げ、という印象が強い。丸投げではなく、指定管理者がちゃんと維持管理を行うか、町側はしっかり監視する必要があるのだ。そのためには人員も予算が必要となる。もしかすると現状よりも予算が必要になるおそれもある。

上手くやれないと、この美術館は消滅することになりかねない。もったいない。もったいなさ過ぎる。
なんとか上手くやってくれることを、強く強く願うものである。