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ノーベル物理学賞が日本人三人に

南部陽一郎氏と小林誠益川敏英両氏に与えられたとのこと。かなりびっくり。日本人だけで科学系のノーベル賞の賞金全額を取ったのは初めて…いや違うな、間違った、湯川先生は単独受賞なんだ、利根川先生もか、忘れてた。
小林・益川先生にはいずれ与えられると思っていたけど、同時に南部先生も受賞とは。より根本理論だからか。ちなみに南部先生は米国国籍を取ってます。「日系アメリカ人」と言うのが適切かもしれません。
このテーマが受賞したのは、今年はヒッグス粒子を探しているLHCが出来たということに関係しているのかもしれませんね。

ノーベル賞のキーワードは「素粒子理論」「自発的対称性の破れ/対称性の自発的な破れ」。小林・益川両先生に関してはさらに「CP対称性の破れ」「3世代6種類のクオークの予言」。
南部先生の研究に関してはこれが分かりやすいかな。

鉄は770℃のキュリー温度より高温では常磁性だが,それ以下では強磁性となり磁石にくっつく。火山のマグマが冷えるとき,その時点での地磁気を記憶するので,この現象は古地磁気学の手段となる。このように強磁性体が磁化すると,外部磁場を0にしても磁化の方向を自ら保持する。しかし,基本となるシュレディンガー方程式は特定の方向をもたず,空間の回転に対して対称である。このようにミクロな基本方程式がある対称性をもつが,それに従う系が対称性を破っているとき,「対称性が自発的に破れている」と呼ぶ。
対称性の自発的な破れは,相転移と密接に関係しており,たとえば氷が解けるのは,並進対称性が自発的に破れた状態(氷)と,それの回復した状態(水)との転移である。対称性が自発的に破れると,それを回復しようとして系が揺らぎ,その量子として,フォノン,マグノンなど,質量ゼロの準粒子が登場する。これを一般的に述べたのが,本研究科OBである南部陽一郎先生らが 1961年に発見した,南部・ゴールドストーンの定理である。
第31回~ - 理学のキーワード - 東京大学 大学院理学系研究科・理学部

これのほうが分かりやすいか。

この磁石模型は大阪市立科学館にあるそうな。
南部陽一郎先生が科学館に
↑このなかにリンクしてある、南部先生に渡された論文pdfはなかなか良いですね。

小林・益川理論に関しては、KEKのBファクトリー解説とか。

B中間子での「CP不変性の破れ」

重いW粒子のやりとりで起きる「弱い相互作用」は、陽子の大きさの約500分の1という極微の世界でのできごとである。そこでは電子のようなレプトン族と同じく、6種類のクォークも2つずつが仲間となり、無関係な3組(3世代)にすっきり分類されるかに見えた。
ところがクォーク族の場合には、W粒子の放出や吸収の際に、同じ世代内での転換だけでなく、わずかだが下図の点線のように、別の世代のクォークに変わることもある。この現象は、違う世代のクォーク成分が少しづつ混じり合うためと考えられ、世代混合と呼ばれている。せっかくの美しさを破るこの複雑さは、まるで自然の気紛れのようであり、素粒子の大きな謎の一つとなっている。
まだ、3種のクォーク(u,d,s)しか知られていなかった1973年に「クォークが少なくとも3世代あれば、世代混合によりCP不変性を破ることが可能になる」という、有名な小林・益川理論が発表された。その後の20余年にわたる実験研究により、予言した3つのクォーク(c,b,t)が見つかり、上図のような3世代の関係の測定が行なわれてきた。そして、この理論に最近の実験結果をあてはめた時、第3世代のクォークがCP不変性を破る鍵を握っていることが分かった。
ところで、クォークは単独では存在できない。第3世代のbクォークを調べるには、bとd(またはu)クォークが結び付いたB中間子がもっとも良い対象となる。小林・益川理論は、このB中間子が崩壊する際に、CP不変性を守らないことを予言している。こうして、B中間子と反B中間子の崩壊の仕方を詳しく比較することが、永年にわたるCPの謎を解明する道だと認識されるに至った。
http://www.kek.jp/kids/multi/particle/cp_physics.html

もうちょっと詳しい解説だとこちらかな。

アップクォークダウンクォークは対にして書かれていますが、これは弱い相互作用がこの対に対して働いてダウンクォークアップクォーク(あるいはその逆)に変える性質があるためです。
…もしこの「対」の関係が完全だったら、世代の異なる粒子は互いに移り変わる手段がないので、先ほどのストレンジクォークは一度生成されると壊れることなく自然界に残ってしまいます。実際にそうなっていないのは、「対」の関係が少しだけねじれているためで、アップクォークと対になるのは、ダウンクォークとストレンジクォークをある割合で混合したものになっています。つまり、ストレンジクォーク弱い相互作用を通じてアップクォークに移り変わることができるわけです。
1964年、「奇妙な」粒子の一つである中性K中間子(ダウンクォークとストレンジ反クォークの束縛状態)の崩壊が、わずかにCP保存則を破っていることが発見され、大きな驚きを与えました。CP保存則というのは、粒子と反粒子を入れ替えた世界(荷電反転)の物理法則は、ちょうど我々の世界を鏡で見た時(空間反転)と同じになっているはず、という、素粒子理論の対称性です。当時はその対称性の破れを自然に説明できる理論などなかったのです。
小林と益川の両氏は1973年、3世代のクォークを導入することで、CP対称性の破れを自然に説明できることを示しました。3次元の軸(ダウン、ストレンジ、それにボトムクォーク)の間のねじれは3つの角度で表すことができますが、混合の仕方が複素数を含むと、6つのクォーク場の位相回転では吸収しきれない複素位相が残ることがわかります。…小林・益川理論の特徴は、クォークの状態に複素数の空間での回転を与えると、複素数の位相という自由度が出てくることを指摘したことでした。この複素位相がCP対称性の破れを与えるのです。この複素位相は2世代では残らないので、CP対称性の破れを説明するには3世代目のクォークを導入することが必要だったわけです。
世界を変えた一つの論文 〜 小林・益川理論 〜

産経新聞の人物解説の掲載は早いですなぁ。
http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/081007/acd0810071956006-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/081007/acd0810072037011-n1.htm