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第60回正倉院展@奈良博

正倉院展のことは第60回正倉院展@奈良博<'08/10/25-11/10> - 子子子子子子(ねこのここねこ)にも記載)
本当は開催初週に行くつもりが高円宮家根付コレクション展へ行ってしまったので、ようやく最終週の終了3日前になってから訪問した。残念ながら雨となった空模様の中を、凍えながら奈良博へ向かったのであった。
既に先週の日曜日に新日曜美術館正倉院展が取り上げられていたので、その放送を見た観覧者がたくさん居たように感じた。そこら辺りで頻繁に「ああ、これテレビで見たわ」「〜ってテレビで言うてはったわ」などなど。テレビの影響力って強い。

今年の正倉院展のポイントは、新日曜美術館で取り上げていた内容と絡めると、おそらく「(本当は回数なので違うのだが)還暦を迎える正倉院展」「正倉院宝物の補修」なのかな。

それとは関係なく、興味を持った宝物を少し挙げていく。
まずは佩飾品。その中でもこの犀角製の魚。年を経て飴色になった、良い気配の犀角。そして細かい細工が施された魚。貴人の装いには良いものが使われているのですねぇ。

ちなみに佩飾というのは

佩飾(はいしょく)
組紐などにつないで腰帯につるす飾り。佩き飾り(はきかざり)のこと。
(第60回正倉院展図録p.125より)

であり、

は・く【佩く・帯く・着く・穿く・履く】
〔他五・下二〕
(1)(多く「佩く」と書く)腰につける。さす。帯びる。古事記(中)「やつめさす出雲建(いずもたける)が—・ける太刀つづら多纏(さわま)きさ身なしにあはれ」「一つ松人にありせば太刀—・けましを」
(以下略)
(広辞苑 第五版 (C)1998,2004 株式会社岩波書店)

ということである。
これらがぶら下げられる帯も当然ながら超高級品。今も鮮やかな色合いの糸が刺繍してある腰帯。縁取りの組紐も美しい。

意外な品としては、虹龍と名付けられた貂のミイラ。前足が無くなっているので肋骨部分も頸の骨のように見え、竜として扱われたようである。しかし当初から宝物として納められたのか「宝庫に侵入した貂が自然乾燥したものか」は不明であるとのこと。雨乞いに用いられたのじゃないか、と単純に思ってしまったのだが、実際はどうなのでしょうな。その他、画像はないのだが、ツタを編んで作られた白葛箱(中倉132)も見事であった。なお、枝が竹で匙が貝で作られたスプーンである貝匙(南倉49)は、図録を実家の母に見せたところ「私も田舎(奈良県東部)で竹と貝でできた匙を使ってた」と言われてびっくりした。戦前には一般に使われていたのかもしれない。

今回も興味深く見たのだが、

なんとなく観覧する人が多くなり、気迫のこもった人々が少なくなってきているように思えてならない。
(富山尚一氏 正倉院展60回のあゆみp.277より)

という言葉を見ると、強く同意すると共に、私自身もその「なんとなく」の一人に過ぎないのかもしれないと、痛いところを突かれた感じを受けるのであった。